by Guest » Fri Feb 07, 2025 1:40 am
Thanks for the video. Kenji Eno was a visionary. If you've got kids or if you're just a fan of Kenji Eno, his children's book comes with an English translation on every page. Kaze no Regret was featured on ludomusica's page a few years ago, I recommend google translating the description.
https://ludomusica.net/main#lm30008
音楽を中心とした今回の展示だが、本タイトルは音楽に限らず「ゲームと音の関係」全般にわたる記念碑的作品として、タイトル全体として推薦する。
1989年にPCエンジン版『イース』においてキャラクターがプレイヤーに声で語りかけ、1994年にスーパーファミコン版『ダウン・ザ・ワールド』で初めて歌ものの主題歌が流れた。同年にはセガサターンとプレイステーションが発売され、チップチューンから録音物利用をメインにしたゲームサウンドの変容を確定づけた。このような時代の流れの中、1997年に「映像のないインタラクティブ・サウンドノベル」として生まれたのが本作である。
当時「天才」と謳われた飯野賢治がプロデューサ・ディレクタを担当し、人気テレビドラマを多数手掛けていた坂元裕二が脚本を担当。声優陣も柏原崇、菅野美穂、篠原涼子などの人気俳優を起用した。音楽は鈴木慶一、矢野顕子が楽曲を提供。録音エンジニアはファーストスマイルエンタテインメント(当時)の大川正義と、当時として考えうる最高峰のスタッフ、キャストで制作された。
発売時の評価はまさに「賛否両論」。飯野もあえてそれを狙った節はあるものの、ビジネス上では失敗とみなされ、その後「音だけで成立させるゲーム」は業界では難しいとされ、大規模な制作はされないまま今日に至っている。
しかし本作は、本当に「全てが失敗」なのだろうか。
失敗があったとしたら、それはどこなのか。
そしてそれを乗り越える努力はあったのだろうか。
本作をアーカイブとして推薦する理由はここにある。
録音物が使えるコンソールが登場したことで、ゲームは遊戯という「コンテンツ」から、映像・声・音楽を届ける「メディア」へと変容する。それは2021年の今日、歴史が証明した。若者にとって「新曲」の定義は「ディスクメディア発売」から「スマートフォンゲーム内への配信」へと移り変わり、ラジオドラマと呼ばれた音声ドラマは、声優人気も相まって、インターネットからゲーム内へとその流通の場が変化した。
本作発売から20年余。経験豊富な音楽・音響スタッフやゲーム業界は本作を封印し続けた。
一方で素人同然の若い音響スタッフやゲームデザイナが、インターネットで、スマートフォンゲームで、サウンドノベルの録音方法も演出方法も分からず、音のUI、UXの構築方法も分からず試行錯誤を続けている。
「早すぎた孤高の良作」である本作は、音だけで情景を描き、音だけで状況を把握させ、音だけで聞き手に選択を楽しませる手法を研磨し続ける重要性を、いまも私たちに投げかける。これは選者であるわたし自身も例外なく、音とゲームに関わる者が背負うべき十字架だ。
この十字架を背負いながら、深い霧の中で歩みを進める私たちを静かに照らし続いている「たった1つの篝火」が本作なのではないだろうか。
推薦者
伊藤 彰教
東京工科大学
Akinori Ito
東京工科大学メディア学部特任講師。サウンドアート制作やインタラクティブ・サウンドの研究に取り組む。近年は、ゲームサウンドの総合的な構造分析や「主観的聴取点」という概念から多様なコンテンツの音表現研究を進めている。
Thanks for the video. Kenji Eno was a visionary. If you've got kids or if you're just a fan of Kenji Eno, his children's book comes with an English translation on every page. Kaze no Regret was featured on ludomusica's page a few years ago, I recommend google translating the description.
https://ludomusica.net/main#lm30008
[spoiler]音楽を中心とした今回の展示だが、本タイトルは音楽に限らず「ゲームと音の関係」全般にわたる記念碑的作品として、タイトル全体として推薦する。
1989年にPCエンジン版『イース』においてキャラクターがプレイヤーに声で語りかけ、1994年にスーパーファミコン版『ダウン・ザ・ワールド』で初めて歌ものの主題歌が流れた。同年にはセガサターンとプレイステーションが発売され、チップチューンから録音物利用をメインにしたゲームサウンドの変容を確定づけた。このような時代の流れの中、1997年に「映像のないインタラクティブ・サウンドノベル」として生まれたのが本作である。
当時「天才」と謳われた飯野賢治がプロデューサ・ディレクタを担当し、人気テレビドラマを多数手掛けていた坂元裕二が脚本を担当。声優陣も柏原崇、菅野美穂、篠原涼子などの人気俳優を起用した。音楽は鈴木慶一、矢野顕子が楽曲を提供。録音エンジニアはファーストスマイルエンタテインメント(当時)の大川正義と、当時として考えうる最高峰のスタッフ、キャストで制作された。
発売時の評価はまさに「賛否両論」。飯野もあえてそれを狙った節はあるものの、ビジネス上では失敗とみなされ、その後「音だけで成立させるゲーム」は業界では難しいとされ、大規模な制作はされないまま今日に至っている。
しかし本作は、本当に「全てが失敗」なのだろうか。
失敗があったとしたら、それはどこなのか。
そしてそれを乗り越える努力はあったのだろうか。
本作をアーカイブとして推薦する理由はここにある。
録音物が使えるコンソールが登場したことで、ゲームは遊戯という「コンテンツ」から、映像・声・音楽を届ける「メディア」へと変容する。それは2021年の今日、歴史が証明した。若者にとって「新曲」の定義は「ディスクメディア発売」から「スマートフォンゲーム内への配信」へと移り変わり、ラジオドラマと呼ばれた音声ドラマは、声優人気も相まって、インターネットからゲーム内へとその流通の場が変化した。
本作発売から20年余。経験豊富な音楽・音響スタッフやゲーム業界は本作を封印し続けた。
一方で素人同然の若い音響スタッフやゲームデザイナが、インターネットで、スマートフォンゲームで、サウンドノベルの録音方法も演出方法も分からず、音のUI、UXの構築方法も分からず試行錯誤を続けている。
「早すぎた孤高の良作」である本作は、音だけで情景を描き、音だけで状況を把握させ、音だけで聞き手に選択を楽しませる手法を研磨し続ける重要性を、いまも私たちに投げかける。これは選者であるわたし自身も例外なく、音とゲームに関わる者が背負うべき十字架だ。
この十字架を背負いながら、深い霧の中で歩みを進める私たちを静かに照らし続いている「たった1つの篝火」が本作なのではないだろうか。
推薦者
伊藤 彰教
東京工科大学
Akinori Ito
東京工科大学メディア学部特任講師。サウンドアート制作やインタラクティブ・サウンドの研究に取り組む。近年は、ゲームサウンドの総合的な構造分析や「主観的聴取点」という概念から多様なコンテンツの音表現研究を進めている。 [/spoiler]